大分市議会議員

甲斐たかゆき

2020年度3月議会の一般質問 改正給特法について

2020.03.17

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2020年度 第1回定例会・3月議会 一般質問原稿(最終原稿案)

3月17日(火) 6番目(全体としては 6番)

 

1.学校現場の「働き方改革」に関連して  まず、はじめは、

(1)「改正給特法」について  質問します。

昨年、開会された第200回臨時国会において、労働基準法第32条の4に規定されている「1年単位の変形労働時間制」を、要件を変質させた上で公立学校の教職員に適用する「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の一部を改正する法律案が、衆議院で9項目、参議院で12項目もの附帯決議が採択される中、12月4日に参議院で可決されました。いわゆる「給特法」の改訂です。「1年単位の変形労働時間制」とは、1年間を「繁忙期」と「閑散期」とに分け、「繁忙期」の勤務時間を延長し、「閑散期」の勤務時間を短縮することによって、年間で平均した週当たりの労働時間が40時間を越えないようにする制度であります。しかし、1日平均11時間17分の勤務を行っている学校の現状を考えれば、時間外勤務の実態を覆い隠すだけで、長時間で過密な労働の解消にはなりません。先ほどの数値は、厚生労働省の「平成30年版過労死等防止対策白書」からのものです。また、国会での議論で文部科学大臣も認めているように、「1年単位の変形労働時間制」で業務や勤務が縮減するわけではありません。さらに、夏休み期間も教職員にとっては研修や授業準備、部活などの仕事があり、決して「閑散期」などではなく、変形労働時間制での休みのまとめ取りが可能となるわけではないのです。労働基準法では「1年単位の変形労働時間制」導入の条件の1つに労使協定の締結を規定しています。ところが、今回政府は、これほど問題のある制度を、労使協定ではなく、地方自治体の条例等によって実施しようとしているのです。これは、労働者保護の観点からあってはならないことであると考えます。しかしながら今回は、変形労働時間制の問題点や課題については、その一端を指摘するにとどめます。そこで今回の質問では、「給特法」の改正点の中でも、施行が4月1日に迫っている「業務量の適切な管理等に関する指針の策定」に関することを中心に、学校現場の「働き方改革」に関連して行います。

2019年1月、中央教育審議会の「学校における働き方改革特別部会」は、学校における働き方改革について、「答申」と「ガイドライン」を発表しました。「ガイドライン」では、「勤務時間」の上限の目安を示し、「答申」では、「勤務時間」管理の徹底を求めていました。しかし、上限違反に対する使用者たる自治体への罰則が設けられておらず、当時からその実効性に疑問が指摘されていました。今回の「給特法」改正では、上限ガイドラインを文科大臣告示、「指針」に格上げしています。そして、「労基法」同様の時間外勤務時間の上限を自治体の条例や規則等で定めるとしている点は、半世紀にわたり放置されてきた教職員の「自主的・自発的勤務」を「在校等時間」とした上で、勤務時間管理がなされることと合わせて、一定の前進であるととらえています。

それでは質問します。

「改正給特法」の成立により、「業務量の適切な管理等に関する指針」を4月1日施行に向けて、教育委員会規則の改正や上限方針策定などを進めていると思われますが、見解をお聞かせください。

 

☆3月末の教育委員会で「方針」の策定をすることがわかりました。

 

 

②次に、その「上限方針」策定の目的や内容について、教職員をはじめ、保護者や地域住民へ、いかにして周知し徹底していくのかも非常に重要になってくると思われますが、今後どのように周知していく予定なのかお聞かせください。

 

☆保護者や地域住民の方々に対して・・・

大分市のホームページ などで周知することがわかりました。

これまでの事例をあげますと、

「全市一斉定時退勤日」や「勤務時間外の電話への自動音声メッセージ」などの導入初期段階において、本市教育委員会が積極的な発信を行ったことで、保護者や地域住民の方々に取り組みの目的や内容が伝わり、比較的スムーズな導入ができたのではないと思っています。今回の「上限方針」の策定についても、学校評議委員会など多くの機会を活用しての積極的な発信で、周知が進むことを改めて要望します。

 

 

それでは次の質問をします。

新たに策定される「方針」の中の「上限時間」とは、設定された上限時間まで業務を行うことを推奨するものではないと思われますが、その点について改めて、どのような見解かお聞かせください。

 

☆今回の「上限方針」が、上限時間まで業務を行うことを推奨する趣旨ではないことが改めて確認できました。

 

④次に、上限時間については、国会審議で、月45時間、年360時間より短い設定をして構わないということになっているとうかがっています。大分市においても例えば、月40時間、年300時間という設定も可能であり、長時間労働是正の観点からもそのようにすべきではないかと思いますが、ご見解をお聞かせください。

 

☆「国や県と同様の設定」とのご答弁でしたが、そのことは、まさに今の学校現場の厳しい実態が共通認識されていることの証だと思っています。ぜひとも、その共通認識のもと、学校現場の声をこれからも十分に聞き、現場とともに長時間労働の是正を進めていただくことを願っています。

 

それでは、ここからは、

(2)学校現場の実態と「持ち帰り業務」について  質問します。

ここで少しばかり、教職員の方々から聞き取りをした学校現場の声を紹介します。「印刷機が混み合う前に印刷するために、かなり早朝に出勤している」「授業準備の時間が学校ではなかなか取れないために、教材作成などを自宅で行っている」「生徒指導への対応で、休み時間や放課後に児童から聞き取りをしたり、放課後など保護者へ連絡したりと対応に追われている」。これは、勤務実態のほんの一部ではありますが、日常の授業や子どもたちと向き合う時間を日々確保するために、その前後の時間を懸命に捻出し取り組んでいることがわかるのではないでしょうか。当然のことですが、給食指導がありますから昼食時には休憩は取れませんし、授業後に取ることも難しい状況にあります。また、子どもたちの休み時間は、ノートの点検や連絡帳への記入、委員会活動の見守りなど。また子どもと一緒に遊んだり、話しを聞いたりもしています。清掃時間は、子どもと一緒に掃除をしたり、別の場所で掃除をしている子どもの様子を見に行ったりもしています。簡単に言うと、朝、教室に行くと、子どもたちが下校するまで職員室に戻って来られないような働き方だということです。子どもたちが下校してからも、学年内の打ち合わせ会や自分の分担されている会議への出席、授業の準備や評価、行事等の準備、調査書類の作成、保護者対応等など・・・これでは勤務時間内に収まるわけがありません。時間外勤務が前提の働き方が学校現場の日常なのです。このような実態ですので、はじめに現場からの声として紹介した「早朝出勤」や「持ち帰り業務」が恒常化しているのです。

 

⑤そこで、質問します。

業務削減を実行する上で、業務の全体像を把握しなければ有効な削減はできないと思われます。そこで、本市におけるタイムカードの運用状況についてお聞かせください。

 

☆これまでの整備状況と運用実態がわかりました。

 

それではここで、文部科学省から出されている「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」の一部を取り上げて、学校現場の実態との共通理解を図りたいと思います。この指針の中で、業務を行う時間の上限として、「超勤4項目」以外の業務を行う時間も含め、教育職員が学校教育活動に関する業務を行っている時間として外形的に把握することができる時間を「在校等時間」とし、勤務時間管理の対象とする、と書かれています。「学校教育活動に関する業務」とは、先程来述べさせていただいた勤務実態から出てきていたことも含めて、「教材研究、事務処理、採点業務、成績処理、家庭訪問、部活動、関係機関や団体等との打ち合わせ」など、在校している時間を基本に、学校内外での業務時間だと考えられています。もちろん先ほどの「持ち帰り業務」の時間も含まれてこそ、学校現場の実態に合った「業務時間」だと思います。そして土日や祝日、休日も「持ち帰り業務」があるわけですから、これらに要した時間もすべて対象になると思います。

 

それでは、質問します。

管理職や教育委員会が「持ち帰り業務」の実態を把握するためには、より正確な記録が必要ではないかと思われます。「在校等時間」といったタイムカードなどによって把握される時間管理のみならず、学校現場で時間外に行っている業務の内容や持ち帰りで行っている業務の内容と時間を的確に把握する必要があるのではないでしょうか。現行のタイムカードでの記録と合算するために、どのように把握し、入力をしているのかお聞かせください。

 

☆自己申告として教職員が自ら手入力していること、・・・などがわかりました。

先ほどのご答弁にあった「在校等時間」は「持ち帰り業務」も含めての認識であるという本市教育委員会の見解をとても心強く思います。この認識のもと、今後とも現場と一体となり、「超勤縮減」に向けて取り組んでください。

さて、現在、先ほどの「入力」の方法について、学校現場から不便さが指摘されているとうかがっています。より真の実態を把握する上でも、何らかの手段で「入力」方法の改善を図ることが必要だと考えます。システム上、早期の対応、改善は難しいことが想定されますが、その場合には、少しでも「入力」への抵抗感が減少する処置を講じていくことを要望します。

 

⑦次に、これまで述べたように学校現場では業務が削減されていないがゆえに、恒常的な長時間労働になっているわけであります。このような実態があるにも関わらず、勤務時間の厳守のみに注力する管理職がいて、いわゆる「時短ハラスメント」が学校現場に生じてしまったのでは意味がありません。その実態をどのように把握し、指導しているのでしょうか、気になるところであります。今回、規則化されることで、「持ち帰り業務」が今まで以上に常態化することがあってはなりません。今後、新たな「持ち帰り業務」が生じないようにするために教育委員会としての考え方をお聞かせください。

 

☆「改正給特法」の国会審議においても、「上限の目安時間を守るためだけに自宅に持ち帰って業務を行う時間が増加してしまうのは、ガイドラインのそもそもの趣旨に反するものです」と文科大臣も答弁しています。先ほどのご答弁にあったように、管理運営に係る責任ある立場としての教育委員会が、現場の実態を積極的に把握して、「持ち帰り業務」の縮減はもちろんのこと、業務量そのものをトータルで削減することにつなげていってください。

 

それでは、ここからは、

(3)業務削減策・人員の配置について  質問します。

ここでまた学校現場からの声を少し紹介します。2018年度から導入した校務支援システムにおいて、小学校現場から「通知表のデータと指導要録が連動しているので、作成の効率が良くなった」など、システムの操作に少しずつ慣れてきたので機能が使えるようになってきた喜びの声を聞きました。また、勤務時間外の電話に対応する自動音声メッセージにより、「仕事に集中できる」など、これまでの取り組みの効果が実感として表れてきているようです。まだ現場実態として改善されていないことも多くありますが、今後とも、取り組み結果を把握するとともに、常に現場教職員の声を大切にしながら、「大分市立学校における働き方改革推進計画」の点検、取り組みの改善、見直しなどを行っていってください。

 

そこで質問します。

学校現場の業務を削減するために「学校給食費(学校徴収金のシステム化)の公会計化」など、文部科学省が例示している各種施策の進捗状況についてお聞かせください。

 

☆「調査の精選」や「研修の精選」、「ICTの効果的活用」など多岐にわたって、「働き方改革」が推進されていることが・・・わかりました。

特に、「学校給食費(学校徴収金のシステム化)の公会計化」について、具体的に進み始めたことを心強く感じています。今後とも現場の声、他市の取り組みなど、情報を収集しながら、学校現場で、実感できる取り組みを進めてください。

 

⑨次に、文科省が例示している「スクールサポートスタッフ」、「部活動指導員」などの配置状況と成果についてお聞かせください。

 

☆限られた人員ですが、「チーム学校」の一員として大切な方々です。今後とも現場からの要望に応じた配置となるように、引き続きの予算確保、増額の検討をよろしくお願いいたします。

 

最後に、今回の質問で取り上げさせていただいたすべての課題に共通することは、学校現場の長時間で過密な労働実態が依然としてあることです。この長時間で過密な労働実態を改善・解消するには、教職員定数を抜本的に増やし、業務量を削減することが一番必要な施策です。これまで同様に、大分県教育委員会、そして国に対して、蓄積しようとしている勤務実態のデータとともに、教職員定数の抜本的な増員要望を今後とも訴え続けてください。その前段として、「法律」で定められている人員が、4月から確保できるように、必要な対策を講じていくことも改めて要望し、質問を終わります。