大分市議会議員

甲斐たかゆき

2020年度6月議会の一般質問(1)感染症に対応したこれからの学校教育について

2020.06.27

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2020年度 第2回定例会・6月議会 一般質問原稿 最終版

6月15日(月) 1番目(全体としては 9番)

 

おはようございます。23番、社会民主クラブの甲斐高之です。発言通告書に従って、一問一答方式で質問しますので、よろしくお願いいたします。

 

はじめは、

1.感染症に対応したこれからの学校教育について 取り上げます。まずは、

 

(1)子どもたちの「学び」の保障について 質問します。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大と政府の突然の「学校の臨時休業」要請から、これまで積み上げてきた子どもたちとの学びの場である学校が一変しました。節目となるはずの卒業式や新学期のさまざまな行事をこれまで通りには体験することができませんでした。子どもたちは仲間たちとの直接の関わりを奪われ、その心中を察するとき、胸が締め付けられる思いです。およそ3か月間の休校期間、学校という共に学ぶことのできる環境下で学習や生活ができなかったことは、子どもたちに大きな影響を及ぼしています。早急に支援が必要です。それは、単に「授業時間」だけを増やして補っていけばいいということではないと思っています。子どもたちにとって、学校は「学び」の場であるとともに、家庭とは別の「生活」の場でもあるからです。また、特別な支援を必要としている児童生徒たちにとっては、これまで以上に学習の進捗や体験の差が拡大していると思われます。それぞれの状態に応じた適切な支援がなければ、学習意欲の継続はますます難しくなると思います。また学力に不安を抱える児童生徒にとっては、学習意欲の更なる低下が懸念されます。

 

そこで質問します。

 

子どもたちの「学び」をどのように保障していくのか、見解をお聞かせください。

 

〔教育部長答弁〕

 

☆夏休み期間の短縮、時間割の工夫、行事の精選などによって、授業時間数の確保に努められていることなどがわかりました。

 

今後とも子どもたちの「学び」を保障していくために、2つの点を指摘し、要望とさせていただきます。1点目は、学校ごとの柔軟なカリキュラム編成に対する教育委員会としての支援です。校区の特色や児童生徒の状況に応じて、これまで編成している学校ごとの教育課程を今回の感染症等に対応していくために、各学校では、時期の変更と内容や進め方の精選を行っているとうかがっています。予算的な処置も含めて、各学校からの要望に対して積極的なご支援をお願いいたします。2点目は、受験生等の不安に対する手立てや支援についてです。受験までに必要な学習が終わるのだろうか、定着していないまま入試をむかえてしまうのではないかなど、受験に対して、かなりの不安を子どもたちだけではなく、保護者の方々も感じています。ぜひ大分市教育委員会が先頭となって、学習の補充体制構築や入試範囲の精選など、不安を少しでも解消できる手立ての取りまとめを他市町村の教育委員会と連携して行い、県教委への意見要望につなげていただきたいと思います。

 

それでは、次に、

(2)子どもたちの「心のケア」について 取り上げます。

 

これまで経験したことのない長期間の学校休業と活動を自粛しなければならない日常でした。大人たち以上に子どもたちはさまざまなストレスを抱えていると思います。言葉にできない悩みや本人にもはっきりとわからない不安があるかもしれません。学年末という区切りで積み重ねられなかった体験、リセットできなかった思いなどもあります。例年、学校では、新学期スタートでの新たなやる気を後押しし、新しい出会いでの関係性の構築を支援していました。しかしこの支援が十分に行われていないのです。このような状況ですから、マスコミがしきりと報道する「学習の遅れ」だけを意識するのではなく、「先生と子ども」「子どもたち同士」の関係づくりを優先して欲しいです。ここで、現場からの声を一つご紹介します。「学校が再開し、仲間づくりの時期ですが、仲間づくりの活動ができません。ふれ合うこと、教室内を動き回りあいさつをしたりインタビューをしたりするなど、仲間づくりに必要としてきた活動ができず、なかなか集団が次のステップに進めません」。これはとある小学校の低学年の先生からの声です。感染症対策という制約がある中でも、現場の先生たちは、子どもたちの心のケアを大切にしようと創意工夫、試行錯誤をくり返しながら、連日取り組まれています。「先生と子ども」「子どもたち同士」の関係づくりなくして、今後の学習などの継続、そして定着はさらに難しくなると思われます。教育研究家の妹尾昌俊(せのおまさとし)さんも「学習の遅れを取り戻すより、まずは安心して学校に来られる環境づくり、悩みや困っていることなどの気持ちを打ち明けられる関係づくりを」と提唱しています。そのために子どもたちに寄り添える環境づくりとして、人員、時間、場所などを配慮、工夫することが必要です。人員について言えば、学級担任だけに任せるのではなく、養護教諭や補助教員等の校内人材との体制づくりはもちろんですが、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーとの連携もこれまで以上に必要です。スクールソーシャルワーカーさんの急な増員は資格などの関係で難しいと思われますので、ご負担をおかけすることにはなりますが、各学校への派遣の頻度を増やすなどの工夫を検討していただきたいと願っています。また、今回の長期休校の影響で、「不登校傾向」の子どもたちには、学校がこれまで以上に高い壁となっている可能性があります。ほかにも、関係性ができていない中で人間関係に不安を感じている児童生徒が増加しています。また、子どもたち同士で接し方がわからずに、戸惑っている様子もうかがっています。そして、感染症への理解不足から起こる「いじめ」の発生も懸念されます。子どもたちの心の状態が心配です。

 

それでは質問します。

 

子どもたちの「心のケア」をどのように行っていくのか、方策をお聞かせください。

 

〔教育部長答弁〕

 

☆エデュ・サポートおおいたの取り組みとして、今回作成したチェックリストで児童生徒の心の状態などを把握し、「チーム学校」として関係機関とも連携し、組織的に取り組もうとしていることなどがわかりました。

 

「不登校」や「いじめ」といった子どもたちのSOSに気づくには、「小さな変化もサインの可能性がある、先入観を持たずに子どもに共感する」ことなどを慶應義塾大学で臨床心理学を教えている森さち子教授も提言しています。ぜひとも学校現場で、このような取り組みが継続していけるように、後ほどの質問でもふれさせていただきますが、教職員の増員とともに、スクールソーシャルワーカーとの連携が強化できるような支援を今後ともお願いします。

 

それでは、次は、

(3)学校での感染症対策について 話題をうつします。

 

臨時休業の期間も含めて、学校では、さまざまな智恵と工夫を出し合い、試行錯誤をくり返しながら感染症対策を講じ、その対策の一環としての分散登校を経て、6月の学校再開をむかえたとうかがっています。しかしながら、子どもたちが集団で学習、生活する学校では、感染症への対応を続けていくことには、ある程度の限界があると思われます。「感染するかもしれない」「感染させるかもしれない」などと不安を持っている子どもたち、保護者の方々、教職員は数多くいると思っています。これは、今回の感染症に対する有効な薬やワクチンがいまだ開発されていないことと検査態勢が整えられていないことなどの要因が考えられます。教職員が子どもたちの前で、より自信をもって授業を行っていくためにも、本来的には、医療従事者の方々や行政現場で働く方々とともに、何らかの検査を受けられる体制づくりが必要なのだと感じています。さて、学校現場に話しを戻しますが、感染へのリスクが高まるのではと不安視されている体験を伴う活動や技能教科、給食や掃除などの活動には、かなりの制限や対策が取られているようです。

 

それでは質問します。

学校での感染症対策についてお聞かせください。

 

〔教育部長答弁〕

 

☆換気、手洗い、マスク、消毒、距離の確保とともに、「十分な睡眠」などの感染症に対する基本的な事柄も改めて例示し、各学校で対策を講じていることなどがわかりました。

 

非接触型体温計のことも答弁していただきましたが、これは本市が4月補正予算としていち早く取り組んでいただけた成果だと思っています。少しでも早く全小中学校に届くことを願っています。また、今回、国会において成立した第2次補正予算などに「学校における感染症対策への支援」が盛り込まれていますので、今後とも県と連携を図りながら補正予算の積極的な活用を要望します。これからも長期にわたり感染症に対応していくことを考えると、現在の学校環境があまりにも課題が多いことに今更ながら驚かされます。児童数に対してトイレや手洗い場の数が足りません。40人学級という制度上の課題からどうしても密になってしまう1クラスの人数と教室の広さなど。学校の環境整備についても感染症対策の視点をこれまで以上に重要視して行っていく必要があると思います。そのためには、「30人以下学級」の全学年への拡充の必要性を今後とも県や国に訴え続けてください。

 

それでは、次に、

(4)教職員の増員について 取り上げます。

 

これまで、子どもたちの「学び」の保障、「心のケア」、感染症対策について取り上げきましたが、すべての対策において共通してくることは、現場の教職員の増員です。これまで述べてきたことからも、限られた時間数の中、効率性だけではなく、子どもたちの実態に応じた丁寧な授業を行う必要があること。そのような授業を行うためには、教材研究や授業準備などの時間が増加してくると想定されること。また、学級担任だけでなく、養護教諭や補助教員等の校内での連携体制を強化するためには、打ち合わせの時間が必要であること。さらに、感染症への対応を考えたときに増加していると思われる教職員の仕事として、消毒作業、検温や体調確認、清掃作業、特にトイレ掃除です。授業時間や休み時間の感染症対策、これら対策などの事前準備や報告事務作業。感染症が心配で登校できない児童生徒や保護者への対応。授業時間の増加や暑さの中での1学期の長期化などがあります。ここで消毒作業について、ある学校の実態を紹介します。「子どもたちが下校した放課後に消毒作業をします。それだけで勤務時間をオーバーします。教材研究、学年会、研修の時間さえ確保ができません」。このような状況の中でも、現場では、教職員にしか対応できない専門的な仕事として、これまで以上に子どもたちの心のケアや授業準備に対応するために、時間を捻出しようとしています。時間はいくらあっても足りません。「働き方改革」とは真逆に向かっています。ですから、消毒作業や清掃作業などは、外部人材に積極的に委託していく必要があると考えます。別府市では消毒作業を緊急雇用の方が、子どもたちが下校した後に行っているとうかがっています。

 

それでは質問します。

教職員の増員が緊急に必要と考えますが、見解をお聞かせください。

 

〔教育部長答弁〕

 

☆増員に対して、学習指導員やスクールサポートスタッフの配置事業などを国の第2次補正予算に関連して県との調整なども行い、今回の第2回定例会の追加補正予算案として計上いただき、心強く感じています。今後の審議、承認を得て、一日も早い人員配置が行われることを願っています。

 

しかしながら今回の配置だけでは、今後を見据えた時には不安があることも事実です。延長された1学期の後半は、特に大変になると予想されます。夏の暑さ、それに伴う熱中症への対応、子どもたちの体力や気力の低下が懸念されます。今でさえ、これまでの長期の学校休業により子どもたちの生活リズムの乱れや体力の低下が指摘されていますので、これからの梅雨の時期も心配です。ですから本市独自の更なる追加の対策として、いくつか提案させていただきます。その一つは、「大分市版スクールサポートスタッフ」を創設し、大規模校などへの複数配置を行うことです。また、「(仮称ではありますが)学校ボランティアスタッフ」として、退職教職員をはじめ地域の方々に延長された1学期の後半期間だけでも、さまざまな勤務形態で子どもたちの支援をしてもらうような仕組みづくりです。これら2つを提案し要望とします。また、暑さ対策として、まだエアコンの設置されていない特別教室へのスポットクーラー等のレンタル設置も要望とさせていただきます。

 

それでは、学校教育に関しての最後となります、

(5)「タブレット端末」を活用した在宅学習について 質問します。

 

今後の感染症再拡大への準備をしておく必要は多くの方々の共通した願いであると感じています。今回の学校臨時休業期間の検証も必要です。しかし感染が落ち着いた今だからこそ、再拡大への対応、準備にあたるべきだと思っています。それは、ICT機器の拡充、タブレット端末の継続的な購入計画です。しかし、機器だけそろえば、すぐにでも「オンライン授業」などが行えるわけでもないとも思っています。オンライン授業用の教材選定や授業計画も必要ですが、懸念されることは、学力に不安がある児童生徒や特別な支援が必要な児童生徒がさらに置き去りにされることです。また視聴に頼る画面を通しての授業に対して、子どもたちの心身への影響を懸念する研究も報告されています。ですから、機器の計画的な拡充は進めなければなりませんが、まずは今回、本市が行った「タブレット端末」を活用した在宅学習の検証が必要であると考えます。

 

それでは質問します。

今後のICT機器の整備に関連して、今回の小学6年生と中学3年生への「タブレット端末」を活用した在宅学習の状況をお聞かせください。

 

〔教育部長答弁〕

 

☆メッセージ機能、ドリルパークなど、タブレットに搭載されているいくつかのアプリの機能を使って、子どもたちが楽しみながら積極的な活用をしていたことなどがわかりました。

 

マスコミ等で報道されているオンライン授業まで行わなくても、一定の成果はあったのではないかと感じました。ですから、現状のLTE回線の通信手段でも構いませんので、一人1台の整備に向けて早期の取り組みを改めて要望します。またこれらに関連した周辺機器や現在ある機器の更なる環境整備も併せて行っていく必要性を付け加えておきます。また、将来を見据えたとき、すべての子どもたちが持ち帰って学習する際のネット環境の整備も重要です。今後とも国や県と連動しながら進めてください。最後に、今回の貸し出しで、不登校傾向にある児童生徒たちの中で、とても興味を示し積極的に活用した事例があったとうかがっています。児童生徒からの要望やご家族の意向も聞きながらになると思われますが、今回だけではなく、不登校傾向にある児童生徒への貸し出しなどの検討を積極的に行っていくことも要望とさせていただきます。

 

※〔教育部部長〕の答弁については、後日(7月末予定)、大分市議会ホームページの「会議録検索」のページにて確認することができます。どうぞお立ち寄りください。