大分市議会議員

甲斐たかゆき

2017年度12月議会の一般質問(1)JR九州の進めようとしている駅の無人化について

2018.03.10

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2017年度 12月議会 一般質問原稿 12月 7日(木) 5番目

 

こんにちは。25番、社会民主クラブの甲斐高之です。発言通告書に従って、一問一答方式で質問しますので、よろしくお願いいたします。

 

1.JR九州の進めようとしている「駅の無人化」について

①公共交通としての役割や社会的責任、合理的配慮などについての見解

 

8月中旬、JR九州が大分エリアにおける「スマート・サポート・ステーション」の導入を検討していることを明らかにしました。通称SSSと言っていますが、「駅の無人化」のことです。9月定例会そしてこの12月定例会でも複数の議員さんが取り上げている質問ですが、市民意見交換会でも多くの意見が出され、12月2日と3日に各地域で行われた住民説明会でも市民のみなさんから多数の意見が出ている重要な問題ですので、改めて質問させていただきます。

 

駅舎から駅係員がいなくなる状況がどれだけ駅を利用する人にとって不安であるのか、その現場が実際にどのような状況なのかを知るために、9月10日に筑豊本線の中間なかま駅に単独で調査研究に行きました。

調査に行ったのが日曜日でしたので、乗降客はそれほど多くはありませんでしたが、数名の方に中間駅前でインタビューし、現状を聞きました。

その結果として、

・朝や夕方の混雑時には、いつも不安な気持ちで、この駅を利用している。

・誰もいない時間帯に何かあったらと危険性を感じている。

・駅員さんがいないので、暗くなってからの治安が心配である。

・ホームへの転落や階段の上り下りなど危険なところがたくさんある

などの声を聞くことができました。

まさに懸念していたこと、心配していたことが返ってきました。

 

中間駅は、まだバリアフリー化されていない駅で、乗り場には階段を上り下りして行かなくてはなりません。これは大分市に多数存在する駅と同様の形式でした。駅には、自動改札機、自動券売機、そしてその横にインターホンが付いている機器が設置されていました。とても安心・安全が確保されているとは言えない状況でした。最近の情報ではありますが、ホームに設置されている監視カメラにも死角があるとのことでした。必要な時には、券売機の横に設置されたインターホンやカメラで対応するとのことですが、これらの機器だけで安心・安全な対応ができるのでしょうか。対応している人の顔が見えずに安心できるでしょうか。心のこもった対応ができるのか大いに疑問を感じました。特に、ご高齢の方や障がいをもたれた方は、こんな機器だけでは、操作に対しても不安が増すばかりです。視覚障がいの方には、まったく配慮されていない駅だと感じました。インターホンの場所さえわからないのではないかという状況です。ただ先日行われたJR九州側の説明の中に、このカメラについては双方向性のモニターを設置し、筆談での対応も可能にしたいとのことでしたので、一定の前進だと感じました。しかし、機器での対応には限界があります。駅員さんの存在が安心・安全の第一条件だと思います。

 

今回特に問題だと感じるのは、このSSSを導入しようとしている駅の中に特急停車駅が含まれていることです。大在駅、鶴崎駅、中判田駅です。特急停車駅でのSSSの導入は、大分県が初めてとなります。特急通過時の駅構内の危険度は計り知れないものになると思われます。まだホームドアも設置されていない駅。そのホームを見守る駅係員さえもいない状況が、どれだけ危険なものとしてJR九州は認識しているのでしょうか。

次に、身近な駅で、定期券や企画乗車券、指定券などの購入ができないこととなります。この点も、今回の説明会で多くの方が意見として出されました。まさに利便性の低下です。

そして、何より心配されるのは、車いすを使用している方など乗降に介助が必要な方は、前日までの予約が前提としていることです。この点も説明会の中で、当日でも可能な限り対応しますと答えていたものの、介助を必要とする方々に、急な外出はするなといわんばかりの処置であると思います。合理的配慮に欠ける姿勢を断じて許すわけにはいきません。住民説明会での実際に障がいをもたれた方自身の訴えは、外出をあきらめなければならないかもしれないといった切実なものでした。私の聞いたところでは、筑豊本線で乗車を断られている事例もあるとのことです。

列車の運転手さんにも話しを聞きました。近年は、ワンマン運転が増加し、車内での急病人などの発生に迅速に対応できていない現状を語ってくれました。さらに駅が無人化されることで、無線連絡をしても最寄りの駅で早期の対応ができないことになり、運転に対して不安が増加すると、苦しい胸の内を訴えていました。

豊肥本線沿線にある中判田駅を利用する生徒さんが多い、大分南高校の校長先生にもお話を聞きました。中判田駅を利用する生徒さんは、本年度157名いるそうです。全校生徒の22%にもおよびます。およそ5人に1人は利用しているということになります。豊後大野市、竹田市、臼杵市などから通学しています。駅員さんがいることで安心して現在は生徒さんも利用できています。また保護者の方も学校側も何かあれば駅員さんが声をかけてくれると安心感があると話していました。さらに校長先生は、今現在の駅の果たしている役割をしっかりと認識して欲しいと訴えていました。それは、まさに駅係員さんの存在そのものなのです。日頃のあいさつはもちろんのこと、元気がないときに声をかけてもらったときのうれしかった気持ち。定期券購入時に交わす何気ない会話のあったかさ。花壇が整備され、周辺に水がまかれていて、癒やしてくれる空間が、駅にはあるのです。大分南高校に通う生徒さんの出身中学校を校長先生に尋ねたところ、大分市内の中学校28校から、市外も23校からかよっているということでした。これだけ多くの中学校から通っているのは、判田という地域が、幼稚園、小学校、中学校、そして高校、大学までもがそばにある地域の環境の良さ、そして駅があり、駅を通じて人々が行き交う町だからではないかと話していました。だからこそ、今回の「駅の無人化」が実施されていくと、「今後の生徒募集にも影響を与えかねない」とまで、校長先生から不安の声が出されました。別の機会ですが、生徒さんからも定期券購入など不便になる、誰もいないと不安との声を聞きました。

今まで述べてきたことからも「バリアフリー法」や「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、さらには大分県議会の「障がいのある人もない人も心豊かに暮らせる県づくり条例」などにも抵触しているのではないかと考えます。県議会のこの条例に関する特別委員会でも「駅の無人化」となるSSSの導入に対して「中身を確認したい」としています。また、住民説明会では、「対応ができない場合がある」とか、「ご理解願います」等の回答も多く、不十分な説明に対して、参加された方々は納得しているとは思えません。今回は説明会には参加できなかった方々の声なき声も確実にあると思います。それなのに、一部報道にあったように、JR九州側が、SSS導入に向けた機器の発注準備を進めていることも明らかになっています。導入ありきの姿勢に怒りを感じます。

私は、「駅の無人化」に強く反対します。これまで述べてきたように、利用する方から考えると、利便性や安全性が低下し、駅機能の維持向上にもつながりません。公共交通の代表格であるJR九州が、地域住民の声、働く社員の意見に耳を傾けることなく、突然の報道先行の方法で今回の事業を進めようとしていることは、企業の社会的責任が問われている緊急事態だと思います。だれもが安心して利用できるJR駅が住民の切実な願いです。SSSは、「合理的配慮」も「社会的責任」も放棄した施策であり、導入を認めるわけにはいきません。

 

そこで質問します。今回のSSSの導入について、本市として、JR九州の公共交通としての役割や社会的責任、合理的配慮などをどのように考えているのか見解をお聞かせください。

 

 

②説明会について

9月定例会、建設常任委員会などでの議論や調査研究をふまえ、本市が主体となってJR九州に申し入れ実現した住民説明会であると認識していますが、今回の説明会に向けてのこれまでの周知の方法やその取り組み状況について、お聞かせください。

 

 

③今後の対応について

今回の住民説明会で出された意見や不安の声、疑問の声を受け、本市として、今後JR九州に対して、どのような対応をするつもりなのか、お聞かせください。

 

 

④バリアフリー化事業の促進も含めた駅の安全性の向上について

だれもが安心して利用できる駅が地域住民の切実な願いです。利用する方々の利便性と安全性を守るには、駅のバリアフリー化とともに、「各駅に駅係員の適切な配置」が何より重要です。現在、大分市が費用の一部を負担し、JR九州が進めている鉄道駅バリアフリー化推進事業はもちろんのこと、大分市内すべての駅について、バリアフリー化事業を促進すべきではないかと考えます。特に地域性を考慮して、駅周辺の他の交通手段との関連も含めて、対策を早期に講じなければ、ますます駅を、鉄道を利用できなくなると思います。

そこで質問します。現在のバリアフリー化推進事業の進捗状況と、今後の動向について、見解をお聞かせください。

 

 

現在進めている各地域での「地域ビジョン会議」でも、駅周辺やそれに接続する道路などの整備について議論されているようです。特に中判田駅については、大南地域ビジョン会議でも中心的な話題として論議されています。また、地域の課題として、中判田駅の現在の入り口とは反対側からも出入りができるような改良をして欲しいと20数年前から要請書などを提出してきている事実もあります。さらに近年では、地元住民代表と日本文理大学工学部の研究室との合同で、「中判田駅を中心とするまちづくりプロジェクト」を進めています。そこには、大学生の豊かで柔軟な発想と専門的な思考に裏打ちされた調査研究の成果があり、未来を見据えた中判田駅の再生モデルが数パターン提示されています。地域住民と未来を担う若者が協働で地域の再生、発展を考えている事例の中心に駅舎の存在があるのです。その中心である駅には当然のことですが、駅係員さんがいます。公共性のある駅だからこそ、地域活性化策の中心となっていたのに、その駅が、無人化で駅係員さんがいなくなる。これまで積み上げてきた地域が自らの知恵と工夫で活性化していこうとした取り組みはこれからどうなるのでしょうか。このような取り組みを継続できるようにすると共に、各地域の特性を活かした取り組みを新たに生み出していくためにも、駅の無人化をすることなく、まずは、現在の体制を維持し、各地域とこれからの駅のことを協議していくことが必要なことだと考えます。他の自治体での事例も参考にしながら、駅のある自治会との協力を模索したり、駅舎の共同運用を検討したりと、時間をかけながら論議していくことを願います。

今回の住民説明会の中で、JR九州側は、「現在、駅係員が対応できていない時間帯にも、SSSを導入することで、お客さまへの見守りの時間帯が増え、安全性が向上します」と述べたり、「車いすを利用されるお客さまに対して、対応できる駅が増えるので利便性が向上します」等とも述べたりと、これまでの自らが行ってきた対応を逆手に取ったような論法でまとめてきています。利用する側への配慮に欠ける言動に怒りや失望感さえ感じました。

駅に人がいるからこそ安心・安全が保たれ、そこに人が集い、笑顔が生まれると思います。「SSS」をJR九州は「スマート・サポート・ステーション」の略称として説明していますが、同じ「SSS」ならば、『スマイル・サポート・ステーション』が、駅に求められている本来あるべき姿と考えます。その本来あるべき姿をめざし、駅の役割をより高めるためにも、利用しやすい駅をJR九州と各駅の地元住民のみなさんとともに考えていくことが大切なのではないかと思います。JR九州に対して、SSSの強行な導入で「駅の無人化」をすることなく、現在の体制を維持し、今後とも本市や各地域と駅のあり方について、地域性を考慮しながら継続協議していくことを、指導力をもって本市に取り組んで欲しいと切に願います。このことを強く要望し、次の質問にうつります。

 

執行部側の答弁も含めて、大分市議会による議事録はこちらでご覧いただけます